知られざる「天皇家のお財布事情」 恩賜金やご進講の費用はどこから?



文/木下聡

今年4月、天皇陛下が子供の貧困対策に取り組む「子供の未来応援基金」とNPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」に5000万円ずつ、計1億円を寄付したことが報じられた。

即位に伴う天皇の寄付は平成にも行われたが、このニュースをきっかけに改めて天皇家の経済事情に興味を持った人も多いのではないだろうか?

この記事では、主に天皇家のプライベートマネーである「内廷費」の使途などについて取り上げたい。

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内廷費の内訳

内廷費とは、天皇、上皇、内廷にある皇族(美智子さま、雅子さま、愛子さま)の御手元金のこと。法律により定額が定められており、年額3億2,400万円である。宮内庁の管理する公金ではないため、その詳細な会計についてなかなか国民に伝わりにくい。

しかし、1974年2月19日の国会答弁で、当時の宮内庁次長であった瓜生順良氏がその大まかな内訳を明かしたことがあった。

内廷費についてお尋ねがありましたが、内廷費は、これは天皇、皇后両陛下、皇太子、同妃両殿下、それから東宮御所の浩宮さま、礼宮さま、それから紀宮さま、お三人のお子さま、全体で七人になられますけれども、そういう方の経費でありますが、そのうちで物件費的なものは、最近三年くらいの実績を見ますと、六七%であります。あとの三三%が人件費です。

第72回国会 衆議院内閣委員会第5号(昭和49年2月19日)

以後77年、80年、84年、90年の国会答弁でも内訳について触れられており、現在でもその比率はほとんど変動していないようだ。この割合を元に算出すると、人件費には1億1,016万円、物件費には2億1,384万円が割かれていることになる。

内廷職員の人件費について

さて、天皇家の私的な使用人である内廷職員については以下の通りである。

  1. 宮中三殿に使える神職の「掌典」「内掌典」
  2. 神職補佐の仕女
  3. 生物学研究所の職員
  4. 紅葉山御養蚕所の職員

人数は変遷するものの、神職とその補佐は大体30人前後で推移している。研究所、御養蚕所も合わせると、内廷職員全体で約40名ほどとなるようだ。中には非常勤もいるため一概には言えないが、人件費1億1,016万円を人数で割ると平均年収220万円程となる。宮中に仕える私的職員であったとしても、一般社会と相違ない給与額であることに驚く人も多いのではないだろうか。

ちなみに、生物学研究所は昭和3年、昭和天皇が海洋生物学の研究をするために建造された。上皇陛下は長年、ここでハゼの研究を続けられている。

内廷の物件費について

さて、物件費についてはどうか? また、物件費にはどのような項目があるのだろうか? 1990年、当時の宮尾盤宮内庁次長はさらに詳しくその内訳について答えている。

構成比といいますか、割合で人件費の方は先ほどのように大体三分の一ですが、物件費の方については御服装とかお身回りの御用度の経費、これが約一八%程度、それからお食事、御会食、厨房器具等の経費、これが約一三%程度、奨励金、賜り金その他御交際上の経費が約九%程度、それから御研究、御教養関係の経費が七%程度、宮中祭祀の関係の経費が八%程度、その他雑費が一一%程度、大体こういうようなことになろうかと思っております。

第118回国会 参議院 内閣委員会 第2号 平成2年4月26日

発言をまとめると以下の通りだ。

  1. 用度費 18%程度
  2. 食撰費 13%程度、
  3. 恩賜金、交際費 9%程度、
  4. 研究、教養、旅行費 7%程度、
  5. 祭祀費 8%程度、
  6. 雑費 11%程度

用途費

このうち用途費は私的な衣服や日用品に当てられる。例えば、天皇ご一家のご静養やチャリティー鑑賞などは私的な訪問とされるから、この際のお召し物は内廷費会計になる。

もっとも、実際どのように線引されているのかは明らかになっていない。例えば、上皇后美智子さまはトレードマークのお帽子を数百個単位でお持ちであると言われるが、これをすべて公務でお召になるかといえばそうではない。もちろん私的な場面で活用される場合もある。

公式行事でのお召し物は宮廷費扱いとされるが、その判断は宮内庁任せであり、平成時代は特にその区分が曖昧になっていたようだ。

一方、雅子さまは非常に物持ちがよい皇后であることが知られ、お代替わり以降も外務省時代、皇太子妃時代の衣服をリメイクされてお召しになっていることが多い。宮内庁周辺から漏れ聞く話によれば、新しい衣装を仕立てるよりも愛着のある衣装を大事に着続けたいと希望されるというから、その質素倹約ぶりは凄まじい。

ご進講も私費で

さて、物件費の中で興味深いのは研究、教養、旅行費の項目だ。

天皇陛下は水と歴史学について、上皇陛下は魚類についての研究をライフワークとされており、これに関する私的な行事参加などにも内廷費が使われる。また陛下の語学レッスンや愛子さまの教育費、両陛下が専門家を招いてご進講を受けられるときも、その謝礼はここから捻出することになる。

しかしご進講の費用について、陛下が皇太子であった時には事情が異なった。皇太子時代のご進講は天皇になるための「帝王学」の一環であると考えられているためである。天皇になった後は帝王学の必要はないので、同じご進講であっても会計項目が変わるのだ。

今年に入って両陛下は多くの専門家を赤坂御所に招き、感染予防について理解を深められ、医療現場で働く人々に心を寄せられている。この費用がすべて天皇家の私費から捻出されていたとは驚きではないだろうか。

恩賜金について

さて最後に、恩賜金について見てみたい。憲法8条、皇室経済法第2条には、天皇、内廷皇族の私的な賜与についての限度額を年間1,800万円と定めていて、これを超える場合には国会の議決を経ることが必要とされている。現行の憲法下では、過去に以下の時にこの議決がなされた。

皇太子明仁親王殿下のご結婚の際の議決(昭和34年3月13日議決)

天皇陛下のご即位の際の議決(平成2年6月26日議決)

皇太子徳仁親王殿下のご結婚の際の議決(平成5年4月28日議決)

天皇陛下のご即位の際の議決(令和元年6月21日議決)

宮内庁HP

冒頭の1億円寄付はこの議決によって叶ったものだ。この他、昨年両陛下は台風や大雨による被害が甚大だった岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、長野県、静岡県、佐賀県に対し、私費から金一封をご下賜している。

こうしたことは平成皇室にはあまり見られなかったことで、上皇ご夫妻の災害地域への寄り添いは、まず第一に現地へ足を運び、被災した人々と膝を突き合わせて対話することや、食品の下賜が主なものになっていた。

仔細は明かされることがないものの、“内廷費の使途について”という観点から見た時、その御代の特色がよく表れてくると考えられる。

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